長沢「フロノ下」の猪垣を出て南に500mほど行くと、小渡井の枡井戸と腰かけ石がある。
小渡井の枡井戸
小渡井の枡井戸は、ヒノキの根元にある。岩間の枡のようなくぼみに清水がたまり、そこから涼しげな音とともに水が流れ出ている。この井戸については、聖徳太子がこの辺りを通りかかった時に、折からの暑さで喉が渇き水を望まれ、家来が見つけた枡のような井戸の湧水を飲み、その清く冷たい水に感動したという言い伝えがある。
腰かけ石
小渡井の枡井戸と道路挟んだ反対側に、腰かけ石とよばれる石があり、源義経と浄瑠璃姫にまつわる次の話が伝えられている。義経は藤原秀衡を頼り奥州平泉への旅を続ける途中、矢作(岡崎市)の地で兼高長者の屋敷に泊まった。ここで義経は、長者の娘の浄瑠璃姫と出会い互いにみそめあったが、先を急ぐ義経は吹いていた笛を姫に渡し、この笛と共に姫を迎えに来ると言い残し、夜が明けぬ前に旅立って行った。夜が明けると姫は、義経を慕って長沢の地まで来たが、追いつくことはできず、石に腰かけて途方にくれたという。その石がこの腰かけ石と伝えられる。腰かけ石からさらに宮路山に向かう道を行くと、猿岩とよばれる洞窟のある岩がある。浄瑠璃姫が義経を追ってここまで来た時、洞窟から猿が出てきてもうあきらめなさいと姫に告げたので、姫を思案の末に泣く泣く矢作に引き返したという。
豊川の歴史散歩:❹東海道沿いの町を行く 平成25年10月発行より