長慶禅寺前を流れる牟呂用水沿いに、400mほど下流に進むと、右手に鎮守の森が見える。ここは金沢地区の氏神の神明社である。
その創立についてはよく分かっていないが、神社に残る最も古い棟札は、慶長20(1615)年のものであり、その頃には神明社が存在していたことが分かる。
正面入口の鳥居をくぐると、右手にかつて歌舞伎の舞台として使用された建物がある。金沢地区では、江戸時代末期から明治時代の初め頃に、神明社の祭礼の余興として歌舞伎が始まり、この芝居小屋で演じられてきた。戦後の社会情勢の変化の中、祭礼での歌舞伎公演は一時期途絶えたが、地元の有志らにより昭和50年代後半に活動が再開され、金沢歌舞伎(市指定無形民俗文化財)として公演を行うようになった。現在では、赤坂の舞台(赤坂町の杉森八幡社境内)で行われる歌舞伎公演に出演している。
参道を進むと、社殿前の広場手前に一対の灯籠がある。昭和18(1943)年に建てられたもので、「武運長久」と刻まれており、時代の様相を現している。
豊川の歴史散歩:❶豊川沿いを行く 平成25年10月発行より