当社は泙野集落のほぼ中央に鎮座しています。伝承によれば飯盛長者が創建し、長者の家で差配したとされ、竜光寺が建立されると管理が同寺に移り、応永年中(1394)こにはそれが松林庵となり、ついで神主大須賀三郎太夫家の世襲による差配に代わり、享保年中(1716)以降明治維新までは、同家の一族が交代で奉仕しました。
祭神は豊玉姫命で、竜宮の乙姫様とも称され、神武天皇の祖母に当る方です。
女神ゆえに大へん慈悲深く何事によらず幸運を授け、災厄から身を守ってくれると言われ、往昔この地を差配した飯盛長者も海で台風にあった時、豊玉姫命に祈願して命を救われたのお礼に神社を建てたと伝えます。
境内にあるクロガネモチの大樹は霊験あらたかな神木として聞こえ、乳の病気や乳の出のわるい人に御利益があるとされ、女性にかかわりの深い木です。
元禄11年(1698)から明治維新まで泙野村は旗本一色丹後守(3500石)の知行所で、歴代の殿様は親しく当社に参拝しました。明和7年(1770)一色主水が寄進した狩野形の石灯籠は今も社殿の西側にたたずみ、末孫の一色健郎も、明治34年に氏子とともに神前形大灯籠一対を献じています。
当社は昔、神社の杉に竜灯が輝いたとの伝説から、竜天王社(または天王社)と称しましたが、明治3年に泙野神社と改めました。
みと歴史散歩:❶駅中心に 平成12年2月発行より