太宝2年(今から1,270年前)の秋、持統上皇が海路伊勢より三河に行幸のみぎり、当 地に着御、駐駕のところと伝えられ、附近には御所、玉袋、加美、剣、長床など朝廷ゆかり の地名が現存する。
後世、行在所の旧跡に叢祠を建て、御所宮と称し尊崇をあつめた。 現在宮は、下佐脇の佐脇神社境内に移され、五所宮大明神として鎮座 している。 写真の碑は、御所橋から音羽川右岸を150メートル程下った、御馬 地内の音羽川の川中に石積みをめぐらして突出したところに、二本 の黒松の老樹があり、その樹冠の下に建てられている。
今は、おとなう人もごくまれで苔むした自然石のややかたむいた 碑が、音羽の川面を渡る松籟に託して、わずかに昔を語るのみである。
解説 みぎり:時節、おり、ころ
駐駕(ちゅうが):貴人がある地に滞在すること。
義洞(そうし):草むらなどにあるほこら。
尊崇(そんすう):尊びあがめること
樹冠(じゅかん):樹木の上部の、枝・葉の茂っている部分
おとなう:来訪を告げる。訪れる。
松籟(しょうらい):松の梢(こずえ)に吹く風
広報みと:❶いしぶみ 昭和47年4月20日号より